「家を取られるらしい」。埼玉県八潮市で、悪質業者らの“食い物”にされ、2300万円以上のリフォーム契約と借金を重ね、 自宅を失った認知症の男性(80)は、首を傾げ悲しい顔で近所に話していた。今は認知症の症状も進み、 県内の施設で車いすの生活を送っている。全財産と共に借金の記憶も失いつつある。【高本耕太】
◇「いい人」営業マン信じ 知人ら「守れなかった」と悔い
85年ごろから年金生活をしていた男性の元には、97年ごろリフォームや訪問販売業者が頻繁に訪れるようになった。そして、 男性宅の増改築工事が相次ぐ。「1人暮らしなのに」と近所の人も不審がった。シロアリ駆除・防除工事は、12カ月で4回契約し、 床下調湿剤は同じ場所に2度まかれた。訪問販売業者はビデオデッキを持たない男性に、ビデオソフトを52万円で売った。
男性宅に残された契約書や名刺にはリフォーム会社が違っても同じ営業マンの名前がある。営業マンはケーキや「お見合い写真」 を持って連日のように訪れ、男性と親しくなった。この営業マンのあっせんで、男性はさらに1200万円以上の借金を背負った。車に乗せられ、 県内外の消費者金融などを回ることもあったという。
ある雨の日、新品の羽毛布団をかついで自宅へと歩く男性を複数の近所の人が目撃している。男性は「お嫁さんが来るんだ。いい人だ」 と営業マンの名前を挙げながら笑顔で話したという。
「気をつけて」と注意する近所の人の声には耳を貸さず、熱心に参加していた老人会からも足が遠のいた。 「男性がだまされたのは明らかだった」と男性と面識のある女性民生委員は振り返る。そして「営業マンを信頼しきっていて、守れなかった」 と悔やんだ。 【詳細】